\ お気軽に相談ください /

退職に追い込むパワハラの実態とその対策

はじめに

近年、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が深刻な社会問題として注目されています。パワハラとは、職場内の力関係を背景に行われる嫌がらせや不適切な行為であり、多くの被害者が精神的苦痛を受け、退職を余儀なくされています。

特に、繰り返される暴言や過剰な業務負担、無視などが積み重なることで、職場にいること自体が困難になるケースが少なくありません。こうしたパワハラの問題は、個人だけでなく、企業全体の士気や生産性にも悪影響を及ぼします。

本記事では、退職に追い込まれるまでのパワハラの実態や被害者が受ける影響、そして具体的な対策について詳しく解説します。被害に悩む方々が適切な行動を取るきっかけとなり、健全な職場環境が広がる一助となることを目指します。

1. パワハラの種類と具体例

パワハラはさまざまな形で発生し、被害者に深刻な精神的・身体的影響を与える行為です。以下に、主な種類と具体例を詳しく解説します。

身体的な攻撃

暴力や威嚇など、身体に直接危害を加える行為。

具体例

机を叩きながら怒鳴る。

肩を掴む、突き飛ばす、殴るなどの暴力行為。

物を投げつける。

精神的な攻撃

言葉や態度で相手を傷つけたり、尊厳を損なう行為。

具体例

「こんな簡単なこともできないのか」と侮辱する。

会議中に一方的に非難する。

他の社員の前で大声で叱責する。

過去の失敗を繰り返し掘り返して非難する。

人間関係からの切り離し

業務上必要な連絡や人間関係を意図的に断つ行為。

具体例

チームのグループチャットから一人だけ除外する。

職場で挨拶しても無視される。

社内イベントや会議に参加させない。

必要な情報を共有せず、業務を困難にする。

過大な要求

達成不可能な業務や能力を超える仕事を押し付ける行為。

具体例

期限が不可能な量の仕事を課す。

他の社員数人分の仕事を一人に押し付ける。

必要な指導やサポートをせずに「完璧」を要求する。

過小な要求

業務内容や責任を不当に軽くし、能力を発揮できない状況を作る行為。

具体例

重要な仕事を一切任せず雑用のみをさせる。

配置転換を理由にスキルと無関係な簡単な業務ばかり与える。

昇進や研修の機会を意図的に奪う。

個の侵害

プライバシーを侵害し、個人的な問題に干渉する行為。

具体例

家庭の事情や過去の恋愛を詮索する。

プライベートの写真や情報を他の社員に共有する。

結婚や出産について嫌味を言う。

健康状態や障がいについて揶揄する。

2. 被害者が受ける影響

パワハラは被害者の心身に深刻なダメージを与え、仕事や生活の質を大きく損ないます。以下に、被害者が受ける主な影響を詳しく解説します。

精神的な影響

パワハラによる心理的なダメージは特に深刻で、長期的な影響を及ぼすことがあります。

ストレス障害

強いストレスを受け続けることで、不安や恐怖を感じるようになります。

うつ病や不眠症

自己否定感が強まり、気分の落ち込みや眠れない日が続くことがあります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

パワハラの経験がトラウマとなり、加害者を思い出すだけで動悸や震えが起こることがあります。

自己肯定感の低下

「自分が悪い」「自分は価値がない」という感覚にとらわれ、精神的な疲労が増します。

身体的な影響

精神的なストレスは身体にも症状として現れることがあります。

頭痛や胃痛

慢性的なストレスが体調不良を引き起こします。

食欲不振や過食

ストレスによる食生活の乱れが健康を損なう原因となります。

疲労感や倦怠感

十分に休んでも疲れが取れない状態に陥ることがあります。

免疫力の低下

風邪を引きやすくなるなど、身体の防御機能が弱まる可能性があります。

社会的な影響

パワハラの影響は職場を超え、社会生活全体にも波及します。

人間関係の悪化

職場でのトラウマから人を信じられなくなり、友人や家族との関係に支障をきたすことがあります。

孤立感の増加

自分の苦しみを他人に話せず、孤独を感じるようになります。

社会復帰の困難

退職後も働く意欲を失い、再就職が困難になるケースもあります。

経済的な影響

退職や休職を余儀なくされると、収入や生活基盤が不安定になります。

収入の減少

雇用保険や失業手当だけでは生活が苦しくなることがあります。

医療費の負担

心身の不調を改善するための医療費がかかります。

キャリアへの悪影響

パワハラによる退職が「職歴の空白」として見られ、転職活動が難航することもあります。

長期的な影響

パワハラの影響は被害を受けた時点だけでなく、長期的に続くことがあります。

トラウマの継続

新しい職場でも過去の経験を引きずり、似た状況に過敏に反応してしまう。

キャリアの選択肢が狭まる

自分に自信を持てず、希望する職種や挑戦する気力を失う。

健康への影響

長期間のストレスが原因で慢性疾患(高血圧、心臓病など)を引き起こすことがあります。

3. 退職に追い込まれる過程

パワハラによって退職を余儀なくされる被害者は、長期的な心理的・環境的圧力にさらされ、徐々に職場に留まることが困難になります。以下に、退職に追い込まれる典型的な過程を詳しく説明します。

パワハラの始まり:小さな嫌がらせの発生

最初の違和感

パワハラは、言葉のトゲや態度の冷たさなど、小さな嫌がらせから始まることが多い。被害者は「自分の考えすぎかもしれない」と思い、問題視しない場合がある。

孤立感の芽生え

特定の人物から無視されたり、他の社員と比べて不当な扱いを受けたりする状況が出てくる。

ハラスメントのエスカレート

攻撃が露骨化

暴言や過剰な叱責、業務上の妨害などが頻繁に起こるようになる。周囲の社員も見て見ぬふりをするケースが多い。

精神的負担の増大

自分の能力や人格を否定されることで、被害者はストレスを感じ始め、仕事に集中できなくなる。

サポートの欠如

上司や同僚に相談しても「気にしすぎだ」と言われ、適切な対応を得られない場合が多い。これにより、孤立感がさらに強まる。

職場環境の悪化

正常な業務が困難になる

必要な情報が共有されない、業務範囲を無視して過剰な仕事を押し付けられるなど、働く環境が極端に悪化する。

自己評価の低下

「自分が悪いのではないか」と考え始め、自己肯定感を失う。これにより、さらなる心理的負担が生じる。

体調不良の発生

精神的なストレスが蓄積し、頭痛や不眠、胃痛などの身体的症状が現れる。

出社困難状態に陥る

仕事への恐怖心

ハラスメントを受け続けることで、職場に行くこと自体が苦痛になる。

欠勤や遅刻が増える

精神的・身体的に限界を迎え、休職や長期の欠勤を繰り返すようになる。

仕事への意欲喪失

「辞めたほうが楽になれる」と感じ始める。

退職の決断

相談先がない現実

職場内での解決が望めないと判断し、退職を決意する。

自己都合退職を迫られる

ハラスメント加害者や上司から「辞めたほうがいい」「これ以上迷惑をかけるな」と退職を促されることもある。

会社都合ではなく自己都合扱いになるケース

被害者側が退職理由をはっきり主張できず、自己都合退職として処理されることが多い。

退職後の余波

経済的な不安定さ

失業に伴う収入の減少や、再就職活動の負担が生じる。

精神的トラウマ

職場での経験がトラウマとなり、新しい職場でも同じ状況を恐れるようになる。

社会的孤立

職場を離れた後も人間関係が断たれ、孤独感が強まる場合がある。

4. 法的観点:パワハラの違法性

パワーハラスメント(パワハラ)は、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づき、日本では企業が防止措置を講じる義務が課されています。ただし、パワハラそのものが直接「違法行為」として処罰されるわけではなく、具体的な行為が他の法令に違反する場合に、法的責任を問われることがあります。以下に、パワハラに関する法律の基本概念や適用される法的枠組みを詳しく解説します。

パワハラの法的定義

パワハラは、以下の3つの要素を満たす行為として定義されています(厚生労働省の指針より)。

優越的な関係を背景とした言動

職場内での上司-部下や同僚間の力関係を利用した行動。

業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

業務指導の範囲を逸脱した行為や、合理性を欠いた言動。

労働者の就業環境を害するもの

被害者が心理的・身体的苦痛を受け、働く意欲を損なう。

パワハラ防止法の概要

労働施策総合推進法(2020年6月施行)では、企業に以下の義務を課しています。

防止措置の実施義務

企業は、パワハラを防ぐためのルール策定や、相談窓口の設置、教育研修の実施が義務付けられています。
※中小企業は2022年4月から適用。

相談窓口の整備

従業員からのパワハラ相談を受け付け、適切に対処する体制を整備する必要があります。

加害者への処分

パワハラ行為が確認された場合、企業は就業規則などに基づき加害者に対して適切な処分を行う必要があります。

違法行為として認定されるケース

パワハラ行為が次の法律に違反している場合、法的責任を追及されることがあります。

民法

不法行為責任(民法第709条)
加害者や企業に対して損害賠償を請求できる場合があります。
例:名誉毀損、精神的苦痛による慰謝料請求。

使用者責任(民法第715条)
加害者が企業の従業員である場合、企業も連帯して責任を負うことがあります。

労働契約法

安全配慮義務違反(労働契約法第5条)
企業は労働者が安心して働ける環境を整える義務があり、これを怠った場合に責任を問われます。

刑法

パワハラ行為が暴力や脅迫に該当する場合、刑事責任が問われることがあります。

  • 暴行罪(刑法第208条)
  • 名誉毀損罪(刑法第230条)
  • 侮辱罪(刑法第231条)
  • 強要罪(刑法第223条)

男女雇用機会均等法

性別を理由とする差別的な言動や嫌がらせは、パワハラに該当する場合があります。

労働基準法

長時間労働の強要や、業務上の過度な負担をかける行為が該当する場合。

法的責任の追及方法

労働基準監督署への相談

パワハラに関連する労働基準法違反がある場合、労働基準監督署が調査を行い、指導を行います。

損害賠償請求

精神的苦痛を理由に、民事裁判で損害賠償請求を行うことができます。

刑事告訴

暴行や脅迫などの犯罪行為がある場合は、刑事告訴が可能です。

被害を証明するために必要な証拠

パワハラを法的に追及するためには、証拠が重要です。以下のような資料を収集しておきましょう。

  • 日付と内容を記録したハラスメント日誌
  • パワハラ行為を録音した音声データ
  • 加害者からのメールやメッセージ。
  • 医師の診断書(精神的・身体的な被害がある場合)。
  • 相談した記録(人事部や相談窓口への連絡履歴)。

パワハラが違法となるポイント

業務指導の範囲を超えた行為

業務に必要な指導や叱責は許されますが、それが過剰であったり、個人攻撃とみなされる場合は違法行為とされる可能性があります。

継続的な苦痛の強要

一度の行為ではなく、継続的に被害を受けた場合、違法性が強まります。

就業環境の著しい悪化

被害者が通常の業務を続けられないほどの悪影響を受けた場合、企業や加害者の責任が問われます。

5. 被害にあった場合の対策

パワハラ被害を受けた場合、感情的に動くのではなく、冷静に対処することが重要です。被害者が取るべき具体的な行動を以下に詳しく解説します。

パワハラを自覚する

まず、自分が受けた行為がパワハラに該当するかを確認することが重要です。

判断基準

  • 優越的な立場を背景にした行為であるか。
  • 業務上必要な指導を超えた過剰な言動であるか。
  • 就業環境を著しく悪化させる結果を生んでいるか。

迷った場合は信頼できる第三者や相談窓口に相談し、客観的な視点を得ましょう。

記録を残す

被害を証明するために、詳細な記録を残すことが重要です。

具体的な方法

ハラスメント日誌
発生した日時、場所、加害者の言動、受けた被害内容を具体的に記録。

録音・録画
直接的な証拠として、会話や行動を記録(法的な録音の条件を満たすように注意)。

メールやメッセージの保存
加害者とのやり取りを削除せずに保管。

診断書の取得
精神的・身体的な健康被害がある場合は、医療機関を受診して診断書を取得。

信頼できる相手に相談する

問題を一人で抱え込まず、信頼できる人に相談することが大切です。

相談先の例

職場の相談窓口
人事部やコンプライアンス部門、ハラスメント相談窓口に相談。

労働組合
労働者の権利を守るためのサポートを受けられる場合があります。

同僚や友人
客観的な意見をもらえる信頼できる人に話す。

社外の専門機関を活用する

社内での解決が難しい場合、外部の専門機関に相談することが有効です。

主な相談先

労働基準監督署
労働基準法違反に関する相談や調査を依頼できます。

総合労働相談コーナー(厚生労働省)
無料で労働問題全般の相談が可能。

労働局のあっせん制度
トラブルの解決を目的に、企業との話し合いを仲裁してもらうことができます。

弁護士や法テラス
法的措置を視野に入れる場合、弁護士に相談。法テラスは無料または低料金で相談可能です。

退職を考える場合の注意点

パワハラが改善されず、退職を選択する場合は慎重に行動する必要があります。

具体的な注意点

退職理由を明確にする
パワハラが原因で退職する場合、できる限り「会社都合退職」にするよう主張する。

退職届を出すタイミング
転職先が決まる前に感情的に退職届を出さないよう注意。

証拠を確保しておく
退職後に損害賠償請求や法的措置を取る場合に備え、記録や証拠を保管。

退職代行サービスの利用
自分で退職を伝えることが難しい場合は、退職代行を利用する選択肢も。

法的措置を取る

パワハラ行為が違法性を帯びている場合、法的手段に訴えることが可能です。

法的手段の例

民事裁判
精神的苦痛や経済的損失に対する損害賠償を請求。

刑事告訴
暴行や脅迫が含まれる場合は刑事告訴が可能。

労働審判
簡易な手続きで企業とのトラブルを解決する方法。

自己ケアを行う

被害を受けた自分自身の心身のケアを怠らないことも重要です。

具体的な方法

医療機関の受診
精神的なダメージが大きい場合は、心療内科や精神科の受診を検討。

休養を取る
無理をせず、一時的に職場を離れることで心身を回復させる。

カウンセリングの活用
専門のカウンセラーに相談し、心の負担を軽減する。

まとめ

パワハラ被害を受けた場合、記録を残し、信頼できる相談先や専門機関に助けを求めることが重要です。また、適切な証拠を集めながら、自分の権利を守るために行動することが必要です。一方で、自分自身の健康と生活を最優先に考え、無理のない範囲で適切な対策を進めることが大切です。

上部へスクロール